| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-177  (Poster presentation)

黒潮周辺海域におけるカイアシ類の群集構造と種多様性

*寒川清佳((国研)水研機構), 日高清隆((国研)水研機構), 上村泰洋((国研)水研機構), 高橋正知((国研)水研機構), 瀬藤聡((国研)水研機構), 市川忠史((国研)水研機構), 齊藤宏明(東京大学大気海洋研, (国研)水研機構), 岡崎雄二((国研)水研機構), 清水勇吾((国研)水研機構)

1.背景と目的
 日本南方を流れる黒潮は多種多様な魚類の産卵・成育場となっている。節足動物門甲殻亜門に属するカイアシ類(Copepoda)は動物プランクトンの主要分類群であり、高次捕食者の重要な餌となっている。本研究では、春季の黒潮とその周辺海域におけるカイアシ類の群集構造と種多様性を海洋物理・化学環境と共に解析し、時空間変動を明らかにする。
2.材料と方法
 2012〜2014年の春季に、御前崎沖から房総半島沖にかけて全93地点で実施された海洋・資源調査により試料を採取した。カイアシ類試料は、NORPACネット(目合 334.5μm)を150mから海面まで鉛直曳きで採集し、分割した後、実体・生物顕微鏡で同定・分類および計数を行った。カイアシ類各種の現存量(ind m-3)をろ水量より計算し、PRIMER v7(Clarke & Gorley, 2006)を使用して各地点間の群集構造解析と多様性解析を行った。また群集と環境データとの対応を検討した。
3.結果と考察
 全調査海域に出現したカイアシ類172種の群集構造解析により、各年に特異的な群集と、全年を通して出現する群集の存在が明らかになった。クラスター解析により45%類似度で分かれた5群集(A,B,C,D,E)の内、Aは2014年のみ、BとCは2012年のみに出現した。Aの御前崎沖南方の群集は他と大きく異なり(類似度29.3%)、現存量と種多様性は共に低く、低い栄養塩濃度とクロロフィル濃度が観測された。全年を通して出現した2群集:現存量が低く、高温が観測された黒潮系群集D;現存量が多く、高い栄養塩濃度やクロロフィル濃度が観測された群集Eは、年により分布傾向が異なった。


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