| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-197  (Poster presentation)

亜寒帯氾濫原に生息する両生類2種の産卵場所選択

*佐々木那由太(北大・北方圏・FSC), 岸田治(北大・北方圏・FSC), 内海俊介(北大・北方圏・FSC), 宇野裕美(京大・生態研)

一般に、生まれて間もない子の移動能力は低く、生存に適した場所に自力で移動することが困難である。親は自らの繁殖成功度を最大化するためにこの生存に適した場所で繁殖を行う必要がある。産卵場所選択の正確さは選択に失敗した時のリスクの大きな種において高まるかもしれない。北海道に生息するエゾアカガエルとエゾサンショウウオは成熟後、数年に一度水辺を訪れその時持っているすべての卵を卵塊として一箇所に産むというリスクの高い繁殖様式を取っている。両種の産卵場所選択とその後の子の運命の関係を調べるため、北海道大学雨龍研究林内の氾濫原において調査を行った。2017年の5月中旬、雪がおおよそ溶けて両生類の産卵がピークとなる時期に、氾濫原内に300×1500mのプロットを設定した。ドローンを用いて撮影した航空写真をもとにプロット内の全ての池とそこに産まれた卵を探し出したところ、322個の池とカエルとサンショウウオの卵塊をそれぞれおよそ1100個とおよそ1900個見つけることが出来た。それぞれの池は2週間おきに再調査し幼生の密度の他に枯れているか否かや面積、水深、水質、水温などを記録した。両種とも様々な条件の池で産卵を行っていたが、カエルは水深の深い池に多く産卵し、サンショウウオは水深が深いだけでなく、酸性度が低く、温度の高い池に多く産卵する傾向にあった。深く、酸性度が低く、高温であるという条件は枯れにくい池の条件と完全に合致していたが、両種の卵期の生存率や乾かなかった池における幼生の生存率とはほとんど関係がなかった。したがってこれらの種の親は、子が幼生期を完遂し変態することを第一に池選択を行っていると言えよう。さらに、乾かない池を選択できる確率はカエルよりもサンショウウオで高く、より長い幼生期間をもつ種ほどより枯れにくい池を選択して産卵するよう選択を受けていることが示唆された。


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