| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-201  (Poster presentation)

震災による操業自粛の影響で変化した福島県沖の底魚資源

*柴田泰宙(東北区水産研究所), 山廼邉昭文(福島県水産事務所), 坂本啓(福島県水産試験場)

東北地方太平洋沖地震およびそれに伴って発生した津波による影響で、福島県における漁業は操業を自粛し、努力量は大きく減少した。現在は、試験操業による漁業が行われており、操業可能海域は震災後、少しずつ拡大しその努力量は回復してきている。しかし、底魚を対象とする漁業の場合、回復している漁業種でも、震災前の10%程度に留まっている。一方、福島県水産試験場が震災前から継続しているトロール網を用いた調査船調査によると、多くの重要魚種で単位努力量あたり漁獲量(CPUE)が震災前と比較して増加し、その体サイズも大型化していることが報告されている。これは、震災後に底魚の資源量が増加していることを示唆しており、増加したと考えられる底魚資源の資源量を推定できれば、それらを持続的に利用し、震災前より効率の良い漁業となる努力量も提案できると考えられる。本研究では、震災後の努力量の変化を表現可能な資源動態モデルを開発することを目的とし、それを用いて福島県の底魚資源量を推定・将来予測を行った。震災後の努力量の変化を表現可能な資源動態モデルを2つ開発し、既存の資源動態モデルと合わせて、福島県沖の底魚資源のうち、2010年に漁獲された漁獲金額上位7種(ヒラメ、マダラ、キアンコウ、マコガレイ、マガレイ、ババガレイ、イシガレイ)に適用した。解析には2000~2010年の沖合底びき網漁業およびさし網のCPUEを用いた。また、水揚げが多く使用可能と判断した種では小型機船底びき網漁業の2000~2010年のCPUEおよび2010~2015年の調査船調査のCPUEも使用して、資源量を推定した。シミュレーションによって、努力量を変化させたときの、2011年以降の資源量を予測した。その結果、上記7魚種全てで資源量が震災後増加していることが示唆された。また、努力量を震災前と比較してすべての漁業種で減らすことで、資源量だけでなく漁獲量も増加することが示唆された。


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