| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-223  (Poster presentation)

超高感度磁気センサを用いた土中バイオロギングの検討

*町田悟, 市毛敬介((株)豊田中央研究所)

 土中における土壌生物の正確な位置を三次元的に把握する事は、対象生物の群集・多様性・行動といった生態の解明に繋がる。しかし先行研究は、生体の形状を画像処理により認識し行動追跡する事例に留まる。従って現状では生体の平面的挙動のみ把握可能であり、三次元的な空間位置情報を得る事は困難である。今回、超高感度磁気センサを用いた土壌生物のリアルタイム土中バイオロギング手法を提案し、基礎検討を実施したので報告する。
 我々は、アモルファス磁性体にMHzからGHzオーダーの高周波電流パルスを通電した際、外部磁界に応じて素子両端のインピーダンスが急激に変化する“磁気インピーダンス効果”を利用した超高感度磁気センサに着目した。当該センサがアレイ状に配置されたボード上に約40mmの土を入れたアクリルケース(100×100×100mm)を設置し、微小なネオジム磁石(1mm角)を接着した生体を投入した。土壌生物のモチーフとして甲殻部に磁石の固定が容易な体長15mm程度のオカダンゴムシ(Armadillidium vulgare)を選定した。平面(XY)方向の位置は各磁気センサで取得した磁気強度分布から推定し、深さ(Z)方向の位置は磁束密度の絶対値から換算する事で三次元空間位置情報を得た。
 生体投入後の三次元軌跡を描画した結果、生体が地表面を移動し土中へ潜没する様子を可視化する事ができた。本軌跡は計測と同時に撮影した生体の実動作に追随しており、土壌生物の土中バイオロギング計測手法としての有効性を示唆する結果を得た。今後、生体と親和性の高い接着剤の選定・深さ方向の位置精度向上・野外計測等を実施し、本システムの原理検証を進めていく。


日本生態学会