| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-227  (Poster presentation)

ツバメの雌の美しさは雄の抱卵行動に影響しない

*長谷川克(総研大・先導研), 新井絵美(総研大・先導研), 中村雅彦(上教大・理科)

近年、雌の装飾の進化や維持機構への注目が高まっている。これまで、雌の装飾は機能的な雄の装飾が雌雄間遺伝相関のために無意味に発現しているだけだと説明されてきた。しかし、雌雄で装飾が独立に進化していることがわかってきたため雌雄間相関だけでは雌の装飾を説明できず、雌の装飾にも機能的な側面があると考えられるようになった。本研究では、雄のツバメが雌の装飾発現量に応じて子の世話の程度を変えるか、雄の抱卵に着目して調べた。かつての性選択研究では配偶者選択ばかりが着目されていたが、装飾に応じた子の世話もかつて考えられていた以上に性選択に貢献するためである。ツバメは性選択のモデル種であり、先行研究で雌の尾羽の長さと雄の抱卵努力に正の相関がみられているため、産卵後の雌の尾羽の長さを実験的に操作し、装飾発現量に応じた雄の抱卵がみられるか検証した。本調査地では婚外子がいないため、婚外交尾と世話との間のトレードオフに影響されずに、現在と将来の世話間でのトレードオフに基づく雄の投資を調べることができる。その結果、雌の尾羽の長さの操作は雄の抱卵努力に影響しない一方で、元々の雌の尾羽の長さのみが雄の抱卵努力と関係していた。このパターンは装飾に応じて世話量を変えるという"differential allocation"では説明できない。むしろ、装飾の発達した個体が質の高い個体を獲得できるという"differential access"が働いているか、あるいは尾の長い雌が産んだ卵の特徴に応じて雄が世話量を調節していると考えられる。


日本生態学会