| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-228  (Poster presentation)

移動中にクラゲ類を捕食する高緯度域のアオウミガメ亜成体

*福岡拓也, 楢崎友子, 木下千尋, 佐藤克文(東大大気海洋研)

採餌期のアオウミガメ亜成体および成体は、熱帯・亜熱帯域では数十平方km以下の狭い範囲に周年留まり、海藻や海草を摂餌する植物食者とされてきた。一方で、より高緯度の三陸沿岸域は本種の亜成体にとっての季節的な餌場であることが近年明らかになった。当海域を利用する個体は、冬季の低水温(<10℃)を避けるために数百km以上南の海域まで季節的に移動する必要がある。また、本種の亜成体は成体に比べて腸内細菌叢が未発達で海産植物の消化効率が悪いとされている。よって、当海域の亜成体は移動中に植物以外の餌も利用するなど、特徴的な採餌様式を示すと考えられる。本研究では、高緯度の生息域におけるアオウミガメの採餌様式を、安定同位体比分析と動物搭載型記録計によって調べ、低緯度域の知見と比較した。
三陸沿岸域の定置網で混獲されたアオウミガメ43個体(平均直甲長48±12cm)の血液を用いて安定同位体比分析を行い、餌生物群ごとの依存度を調べた。次に、水中での移動経路を記録できる3Dロガーとビデオカメラを6個体(平均直甲長55±13cm)に装着して放流し、野生下での摂餌行動を詳細に記録した。
安定同位体比分析の結果、当海域の個体は海産植物に比べて消化の容易なゼラチン質プランクトンを重要な餌(依存度>60%)としていた。合計43時間の行動データでは、海藻は主に狭い範囲に留まりながら摂餌する(135回中127回)という低緯度域と同様の様式を示した一方で、ゼラチン質プランクトンは直線的に移動しながら捕食する(13回中11回)という特徴的な様式を示した。以上の結果から、高緯度の当海域に来遊するアオウミガメ亜成体は雑食であり、低緯度域に比べて複雑な採餌様式を持つことが明らかとなった。また、低緯度域に留まる個体より多くのゼラチン質プランクトンを移動中に捕食することで、季節移動が必要な高緯度という環境に対応していると考えられる。


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