| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-236  (Poster presentation)

佐渡島における国内外来種テンの行動パターンと土地利用の関係

*江藤毅, 油田照秋, 永田尚志(新大 朱鷺・自然再生)

 佐渡島のテンは、1950-1960年代にノウサギによる造林木への被害対策のために導入された国内外来種であり、現在では島内全域に分布し、その生息数は経験的に多いと考えられている。テンは植物質から動物質まで多様な食性を示し樹上でも採餌活動を行うことから、島内の生態系だけでなく、野生復帰の取り組みが進むトキの繁殖にも影響を与える可能性が危惧されている。そのため、テンの生態を明らかにし、その管理手法を検討する必要性は高いと考えられる。本研究では、佐渡島におけるテンの活動時間帯を明らかにし、行動パターンと景観および繁殖期のトキとの関係性を評価するため、2016年12月から1年間、自動撮影カメラ(以下、カメラ)を用いて調査を行った。調査地は狩猟によるテンの個体数と行動への影響を考慮し、鳥獣保護区を含むトキの利用頻度が高いエリアに設定した。調査地には動画撮影モードに設定した30台のカメラを設置し、テンが撮影された時間から活動時間帯を推定した。さらに、植生データを用いて調査地内の土地利用タイプを区分して、テンの撮影頻度と土地利用タイプとの関係を調べた。また、トキの繁殖期である2017年3-6月(抱卵期—育雛期)の営巣木からカメラ設置地点までの距離とテンの撮影頻度との関係を調べた。調査の結果、佐渡島のテンの活動は夜間にピークを迎えるが、日中にも活動していることが明らかになり、落葉広葉樹林と果樹園の存在がテンの行動パターンに影響を与えることが示唆された。一方、人の生活エリアである市街地との関係は示されなかった。調査地において、テンは民家の納屋や屋根裏を休息や繁殖場所として利用していたことが過去にあり、テンの行動パターンは人の活動とも深く関わりがあることが予想された。営巣木からカメラ設置地点までの距離とテンの撮影頻度との関係は示されなかった。そのため、現状では繁殖期のトキはテンの行動に影響を与えていないと考えられた。


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