| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-244  (Poster presentation)

ウミニナ類の濾過能力比較

*伊藤萌(東大大海研), 金谷弦(国立環境研究所), 三浦収(高知大学), 中井静子(日本大学)

干潟は多くの生物の生息場として重要なだけでなく、沿岸域の水質浄化や生態系サービスを考える上で有益な場である。干潟の水質浄化機能には多くの生物が関わっており、その内での底生生物の役割としてはアサリ等の二枚貝による水中有機物の濾過摂食がよく知られているが、近年では二枚貝の他にも、カワゴカイ属環形動物やウミニナ属巻貝の一部で濾過摂食行動をすることが報告されている。今まで認識されていなかった干潟の底生生物の水質浄化機能の再評価は干潟の生態系機能や保全を考える上で重要である。濾過摂食をおこなうウミニナ属巻貝は日本各地の干潟でよく見られる、いわゆる「ウミニナ類巻貝」に含まれる。ウミニナ類巻貝はウミニナ科、オニノツノガイ科、キバウミニナ科の3つの科に属する巻貝で構成されており、それらは通常、干潟表層で優占するデトリタス食者として捉えられているため、その水質浄化機能を評価した研究は少ない。そこで本研究では、ウミニナ類巻貝における濾過摂食行動が干潟生態系に与える影響を明らかにすべく、ウミニナ科のホソウミニナとウミニナ、およびキバウミニナ科のカワアイを用いた水濾過実験をおこなった。
500mL広口瓶に巻貝を5個体とキートセラス入りフィルター濾過海水(およそ830万cells/mL)をいれ、各試験区から20分ごとに採水して濁度を測った。試験区は20℃の温度条件、各種で3セットずつ設け、またコントロールとして貝のいない試験区を3つ用意した。
実験終了時、ウミニナとホソウミニナ試験区ではコントロール区に比べて明確に濁度が低下していたが、カワアイ試験区では観察されなかった。既往研究の結果と併せ、水濾過機能はウミニナ類巻貝の中でもウミニナ科で発達した機能であることが考えられた。


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