| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-250  (Poster presentation)

熊本地震はオオルリシジミの発生および生息環境にどのような影響を及ぼしているか?

*村田浩平(東海大学農学部)

オオルリシジミ九州亜種Shijimiaeoides divinus asonisは,環境省絶滅危惧ⅠB類,熊本県指定希少動植物として保護されている.九州亜種の生息地は,熊本県内の阿蘇市,南阿蘇村,高森町,産山村の他,大分県内では,竹田市,玖珠郡,由布市などでも生息が確認されるようになっている.しかしながら,熊本県内の生息地のうち阿蘇地域では,2015年の11月以降の阿蘇火山の活動による影響に加えて2016年4月16日(本震)の熊本地震により一部の生息地で大きな被害を受けるに至っている.
本研究では,熊本県内の本種の生息地において火山活動と地震による被害状況と本種の発生状況について調査を実施し,次のような結果を得た.(1)生息地における斜面の大規模崩壊は,阿蘇市,南阿蘇村の一部の生息地とその周辺牧野でみられたが,その他の熊本県内の生息地の被害は軽微であった.(2)被害が軽微であった生息地のうち高森町の生息地は,2012年の九州北部豪雨による土砂の流入や災害復旧による土砂の移動による影響を既に受け大きな回復は見られなかった.(3)阿蘇市の生息地では,噴火後に減少に転じ,火山活動の影響が懸念された.(4)産山村,竹田市の生息地では,斜面崩壊などの被害は軽微であったが発生は少なかった.これらの結果から,本種の個体群の回復には時間を要することが示唆された.


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