| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-262  (Poster presentation)

アマゾン熱帯雨林における択伐後のバイオマス回復過程

*大谷達也(森林総合研究所), Adriano Lima(国立アマゾン研究所), 諏訪錬平(森林総合研究所), 大橋伸太(森林総合研究所), 梶本卓也(森林総合研究所), Niro Higuchi(国立アマゾン研究所)

熱帯林の択伐では、伐採後の森林回復を期待して持続的な利用であると主張されることが多い。択伐後の追跡調査によって回復の過程や必要な年数を議論した事例は多くあるものの、森林動態や伐採方法には地域性が高く、各地の事例がより多く蓄積されるべきである。アマゾン域の森林では択伐による利用が進んでいるものの、アマゾン中央部での商業伐採について択伐後の回復過程を実測した例はほとんどない。そこで本研究では、民間の伐採会社が通常の施行をおこなっている社有林において、択伐された林分の地上部バイオマスの経時変化を追跡した。
 伐採年の異なる林班に合計20プロット(20m×125m、0.25ha)を設置し、2010年、2012-13年、および2016-17年の3回にわたって胸高直径10cm以上の立木を対象に胸高直径を測定した。2010年の時点において、各プロットを含む林班の伐採後経過年数は、4年から15年となる。各立木の地上部バイオマスをアロメトリー式から推定し、プロット内で合算した。伐採後経過年数と地上部バイオマスの関係に、プロットごとのランダム効果を考慮してロジスティック式をあてはめてパラメータを推定した。得られた推定式により伐採後のバイオマス増加過程を推定し、バイオマスが回復するのに必要な年数を予測した。その結果、ロジスティック式で予測される最大値の95%に達するために12年、99%に達するために24.5年かかると予測された。この施業区では伐期を25年と設定しており、地上部バイオマスだけに関しては次の伐期までにおおよそ回復すると考えられた。今後は、より長期の追跡調査によって種構成や伐採対象樹種の蓄積についても検討し、択伐施業の持続性について検証する必要がある。


日本生態学会