| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-264  (Poster presentation)

宮城県仙北地方に分布する湧水湿地―その植生と立地、環境要因との関係

*速水裕樹, 藤本泰文(伊豆沼財団)

 湧水に涵養された鉱質土壌上に成立する湧水湿地は,西日本の丘陵地を中心に存在し,絶滅危惧種や地域固有種を含む重要な植物の自生地として知られている。北・東日本でも少数の湧水湿地が報告されているが,植物群落の構成種や立地,環境要因との対応関係は報告されておらず,その保全を難しくしている。また,当地では湧水湿地の存在が認識されていないため,気づかぬまま消失した湿地も多いと考えられる。本研究では,宮城県仙北地域において確認された湧水湿地とみられる湿地を対象に,成立する立地環境(土壌の特徴や地形など),植物群落の種組成について調査を行った。
 仙北地方で確認された湧水湿地とみられる場所において,斜面の上部から下部にラインを引き,相観が異なる場所ごとに土壌断面調査を行った。また,土壌断面調査地点から左右に1m離れた場所において,植生調査を行った。植生調査は2017年7月と,10月~11月に行い,各プロット内に出現した植物種名と被度,群度(Braun-Blanquet 1964) ,草丈を測定した。被度と草丈から乗算優占度を算出し, TWINSPANによるグループ分けを行った。その後,各グループの指標種をINSPANによって抽出した。
 土壌断面調査の結果,泥炭層などの認められない鉱質土壌であり,また湧水が存在する斜面に立地することから,調査地は湧水湿地と考えられた。INSPANによって算出された指標種には,湧水湿地を特徴づけるイヌノハナヒゲ類やミミカキグサ類が含まれていた。一方,ヌマガヤ,ミカヅキグサ,コモウセンゴケ,サギソウは出現せず,サギソウに代わり近縁種のミズトンボやオオミズトンボが出現するなど,他地方の湧水湿地と異なる特徴を有していた。
 発表では,湧水湿地に成立した植物群落の特徴や,影響する環境要因についても考察する予定である。


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