| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-270  (Poster presentation)

ヒシクイ生息地における風車センシティビティマップ作成

*森口紗千子(新潟大・農), 向井喜果(新潟大院・自然), 佐藤一海(新潟大・農), 望月翔太(新潟大・農), 仲村昇(山階鳥類研究所), 尾崎清明(山階鳥類研究所), 関島恒夫(新潟大・農)

再生可能エネルギーの普及に伴い、風力発電施設による鳥類への影響は世界各地で問題視されてきた。中でも風車への衝突死や生息地の消失は、希少猛禽類をはじめとして、多くの絶滅危惧鳥類の脅威となっている。絶滅危惧種の多いガン類では、バードストライク事例は海外でも報告例は少ないが、渡り経路上に建設された風車を避けるように迂回したり、主な採食地となる農地内に建設された風車の周辺では採食しなくなるなどの影響が報告されている。
鳥類の保全と風力発電の推進に折り合いをつけるには、鳥類が利用する空間を明らかにし、鳥類があまり利用しない空間に風車の建設を計画できるような地図(センシティビティマップ)を整備し、計画段階で鳥類の利用する地域を回避することで、審査の手戻りを減らすとともに環境影響も抑えられる。
風車センシティビティマップでは、鳥類が利用する地域の情報に加えて、渡り経路や飛行高度の情報が重要となる。しかし、国内のガン類の渡りの追跡はまだ例数が少なく、渡りの飛行高度に至っては情報が不足している。そこで本研究では、絶滅危惧種のヒシクイの生息地における飛行高度と採食分布より、高度情報を加味した風車のセンシティビティマップを作成することを目的とする。
ヒシクイの主要な生息地において採食分布を調査し、採食地となる水田、畑地、草地面積やねぐらからの距離などの環境変数を用いて生息適地を推定した。同時に各生息地における飛行高度をレーザー距離計で測定し、風車回転域以上の高度を飛ぶ頻度が高い場合は生息適地マップを補正した。
発表では2017年に国内の春の渡りを追跡できた3羽のヒシクイの生息地点と生息適地指数の推定値を比較した、生息適地モデルの検証結果と渡り飛行高度についても紹介する。


日本生態学会