| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-282  (Poster presentation)

「ハスカップ」の原点を求めて―石狩低地帯南東部における植物利用の一例としてー

*小玉愛子(苫小牧市美術博物館), 草苅健(NPO苫東環境コモンズ)

北海道の小果樹「ハスカップ」は、スイカズラ科の低木、ケヨノミ(Lonicera caerulea ssp. edulis)および、その変種クロミノウグイスカグラ(~var. emphyllocalyx)の総称で、サハリン、ロシア、北ヨーロッパ、北海道、一部本州の高山や湿地、ヤチヤナギやハンノキの群落などに生育し、ミズナラ、ハンノキ、ベニバナヒョウタンボク、イソツツジ、ヤチヤナギ、ヒメシダなどと随伴して生育する。
石狩低地帯南部に位置するウトナイ沼周辺や、勇払平野湖沼群およびその流域(いわゆる”有勇払原野”)には、かつて広大なハスカップの群生地があり「自生地で、人々が果実を採集している様子」は、初夏の風物詩でもあった。塩漬けなどに加工され、主に自家消費用として利用されていたハスカップは、昭和30年代初頭に苫小牧の製菓店で「原材料としての買い取り」が大々的に行われるようになってから「経済的価値を有する自生の小果樹」として採集・取引されるようになっていく。更に昭和30年代半ばに入ると苫小牧港の掘削・開港、昭和40年代半ばを過ぎると苫小牧東部地区の用地買収に伴う農地や防風林・低木林の工場用地への転換などにより、自生地は著しく減少していく。一方、これがトリガーとなり、個人や企業による自生種の移植・開発予定地から北海道各地への株の無償配布が行われるようになっていく。更に昭和50年代に入ると減反政策の転換作物としての栽培が苫小牧、千歳、厚真、美唄などで積極的に進められるようになり、栽培者による育種も行われ、次第に「北海道の小果樹」として知名度が上がっていく。
本報告では、ハスカップの利用と自生地の変遷・現状を取り上げ「北海道のごく限られた地域の湿原・周辺植生と人のかかわり方と、その変化」の一例として紹介したい。


日本生態学会