| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-047  (Poster presentation)

標高によるカラマツ種子の成熟時期の違い

*生方正俊, 塙栄一, 中島章文(森林総研林木育種セ)

カラマツ( Larix kaempferi)は、東北南部から中部地方にかけての山岳域に天然分布するほか、北海道や東北地方にも広く植栽され、東北日本地域の主要造林用樹種となっている。我々は、カラマツの種子成熟に関与する環境要因を明らかにするため、北海道から山梨県にかけての各地域に植栽された個体を対象に種子の成熟時期(発芽率が急激に上昇する時期)の植栽場所や年次による変異を調査してきた。その結果、カラマツは、気温の低い地域ほど成熟時期が遅れ、個体間のばらつきが小さくなること、同一植栽場所での年次間の変動は小さいこと等を報告している。しかしながら、植栽地間の環境の違いは気温だけでなく、緯度の違いに伴う日長等の影響や土壌等の立地条件の影響等、気温以外の様々な要因が異なり、これらがカラマツの種子成熟に影響していることも考えられる。そこで、今回は気温以外の環境要因の違いが比較的小さいと考えられる一つの山体の同一斜面に植栽されたカラマツを対象として種子の成熟時期の調査を行った。長野県と群馬県の県境に位置する浅間山の南向き斜面の標高1,300m~2,000mに生育するカラマツ20個体を対象に、7月下旬から11月上旬にかけて、約10日間隔で個体別に球果を採取し、発芽率を調査した。これに加えて、標高2,000m以上に天然分布するカラマツ6個体についても同様の調査を行った。最も早く発芽率の急激な上昇がみられたのは、標高1,300m~1,800mに生育する個体の8月20日であり、最も遅く発芽率が上昇したのは標高2,125mに天然分布する個体で10月10日であった。全体的に、標高が高い場所に生育している個体ほど種子の成熟時期が遅い傾向がみられ、カラマツの種子成熟に気温が影響していることが示唆された。本研究は生研支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)」の支援を受けて行った。


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