| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-090  (Poster presentation)

ポリアミンによる光合成への寄与とその日変化の種間比較

*松山秦(京大生態研), 後藤大也(北里大海洋), 河田凛(北里大海洋), 才木真太朗(京大生態研), 関川清広(玉川大農), 中野隆志(富士山科学研), 安元剛(北里大海洋), 神保充(北里大海洋), 渡部終五(北里大海洋), 坂田剛(北里大一般教養), 石田厚(京大生態研)

ポリアミン類(PAs)はすべての生物に存在する低分子化合物で,その代表的な3種(プトレシン,スペルミジン,スペルミン)は多くの細胞で高濃度に含まれている.近年,PAs溶液が大気中のCO2を捕捉・濃縮し,サンゴの石灰化に寄与していることが明らかとなった(Yasumoto et al. 2014).PAsのCO2を捕捉・濃縮する能力は,植物においても光合成に寄与している可能性は高いと考えられる.これまでに演者らは,葉内空間間隙が低CO2時にPAsが光合成に寄与していることを示唆してきた(2017生態学会).強い乾燥下で植物が気孔を閉じると,葉内空間間隙が低CO2になる.そこで,厳しい乾燥のかかる小笠原諸島父島の乾性低木林構成樹種を対象に,乾燥地での光合成にPAsが寄与しているか,PAs生合成阻害剤(MHCA)を葉に塗布し検証を行った.材料はテリハハマボウ,ハウチワノキ,シマシャリンバイ,ムニンネズミモチ,シマイスノキの5樹種を用い,葉のガス交換,光合成の電子伝達速度(ETR)の日変化を調べた.ガス交換の測定は光合成蒸散測定装置Li-6400XT(LI-COR, Inc.)を用いた.5樹種の気孔コンダクタンス(gs)の日変化を調べたところ,テリハハマボウは日中のgsが平均0.25±0.014 μmol m-2 s-1と5樹種の中で最も高かった.また,前日に100μM MHCAを塗布した葉ではテリハハマボウでのみ,高ETR時に光合成速度が有意に低下することがわかった(MHCAあり17.2±0.27,MHCAなし15.5±0.43μmol m-2 s-1).またこの時,葉肉コンダクタンスも低下している傾向が見られた.MHCAはプトレシンからのスペルミジンの生合成を阻害するので,特にスペルミジンとスペルミンの量を減らしたと予想される.これらのデータと葉内のPAs含量や組成の日変化から,小笠原の乾性低木林構成種の光合成にPAsが関与しているか検討する.


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