| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-094  (Poster presentation)

落葉樹の冬季の窒素利用戦略

*上田実希(日本女子・理)

窒素は多くの陸上生態系において植物の生産を制限する要因となっている。このため、植物は成長に必要な窒素を獲得するさまざまな戦略を進化させており、植物の窒素獲得に関する多くの研究がこれまでになされてきた。しかし、これらの研究の大部分が植物の成長が盛んな春から秋に集中しており、冬季の窒素獲得に関する研究例は限られている。特に冬に葉を落としている落葉樹の冬の窒素利用はほとんど研究されてこなかった。しかし、日本国内において落葉樹が生育する地域は高緯度に位置し、冬季の期間が長い。このため、この期間に植物が獲得する窒素が年間の獲得量に占める割合は無視できない可能性がある。本発表では、日本の冷温帯林に優占し、成長速度が異なる12種の落葉樹の稚樹を対象として、冬の窒素獲得能力を測定した。その結果、全ての種において冬季に窒素獲得を行うことが確認された。さらに、冬季の根あたりの窒素獲得能力を成長期と比較し、冬季の窒素獲得の重要性を考察する。
 一方、これまでの先行研究において、根の窒素獲得能力はSpecific leaf areaなどの植物の機能形質と強い関係があることが分かっているが、冬季の窒素獲得能力がどのような機能形質と関係があるのかは分かっておらず、その制御機構が謎である。このため、本研究では、根の窒素獲得能力と機能形質との関係を解析し、冬の窒素獲得の制御機構と成長期の獲得との違いについて考察する。


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