| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-149  (Poster presentation)

哺乳類と鳥類によるツツジ科小低木(ガンコウラン、クロマメノキ、シラタマノキ、コケモモ)の果実利用: 浅間山高山帯における果実食者の垂直分布に着目して

*高橋一秋(長野大環境ツーリズム), 向山大智(長野大環境ツーリズム), 佐伯幸祐(長野大環境ツーリズム), 小出悠太朗(長野大環境ツーリズム), 川本謙伍(長野大環境ツーリズム), 甘利大河(長野大環境ツーリズム), 井出萌(長野大環境ツーリズム), 高橋香織(クマ棚ネットワーク)

高山帯は地球温暖化の影響を受けやすい脆弱な生態系の一つである。例えば、高山帯への種子捕食者の侵入によって、ツツジ科小低木と種子散布者の間で築かれてきた相利共生関係のバランスが崩してしまう恐れがある。本研究では、ツツジ科小低木の果実を利用する哺乳類・鳥類と、これら果実食者の垂直分布を把握した。
調査は標高2,568mの浅間山(軽井沢町長倉山国有林)で行った。森林限界の標高1,670m地点から標高2,370m地点までの間を標高差100m間隔で区切って、計8か所の調査ポイントを配置し、4年間で計38台の自動撮影カメラを設置した。各年、調査期間は7月~11月までの5か月間とし、撮影された静止画と動画を分析した。
4年間で撮影された哺乳類は8種514個体、鳥類は13種125個体であった。森林限界から最も高い標高で確認された地点までの標高差は、カモシカの700m(標高2,370m)が最も大きく、次いで、キツネ・ツグミの500m、ニホンジカ・ハシブトガラスの400m、ツキノワグマの200m、イノシシ・ノウサギの100m、テンの50m、タヌキ・アカハラ・キジバト・シジュウカラ・シロハラの0m(標高1,670m)の順であった。そのうち、果実利用が確認された哺乳類は6種58個体、鳥類は2種8個体であった。確認された個体数はツキノワグマ24個体で最も多く、次いで、ニホンジカ13個体、ノウサギ13個体、ハシブトガラス7個体、カモシカ4個体、イノシシ2個体、キツネ2個体、ツグミ1個体の順であった。ガンコウランの果実は全ての動物種が利用していたが、クロマメノキの果実はツキノワグマ・ニホンジカ・ノウサギのみ、シラタマノキの果実はキツネのみが利用していた。


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