| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-152  (Poster presentation)

哺乳類各種の種子の散布環境の比較

*小池伸介(東京農工大学)

多くの哺乳類が周食型種子散布者として機能することが知られているが、それぞれの動物種の種子散布者としての機能には違いが認められる。これまでは、対象植物種、1回当たりの散布種子量、散布距離の違いなどの動物種間の違いが注目されてきた。しかし、散布後の種子の発芽や実生の定着を考慮した場合、種子の散布環境の違いを定量的に評価する必要がある。そこで、本発表では本州の冷温帯広葉樹林において、主な周食型種子散布哺乳類として機能することが知られるツキノワグマ、テン、タヌキ、アナグマ、ニホンザルの5種の種子の散布場所の微小環境の特徴を定量的に評価することを目的とした。評価項目は開空度、斜度、土壌硬度、リターの厚さ、周辺の高木・低木の本数、周辺の林床植生被度、周辺の同種の本数である。ツキノワグマ91個、テン158個、タヌキ47個、アナグマ45個、ニホンザル63個の糞を対象とした。また、比較対象として400箇所のランダムサイトにおいても、同様の評価項目の測定を行った。その結果、ツキノワグマは斜度が緩やかで、リターが豊富で周辺の低木の本数が少ない場所に糞をする傾向があった。一方、テンはリターが少ない場所に糞をする傾向が認められた。タヌキとアナグマも斜度が緩やかで、リターが豊富な場所であったが、周辺の低木の本数が多い傾向があった。ニホンザルは一定の特徴をもたず、ランダムに糞をしていた。以上より、各動物種の種子の散布場所の微小環境特性には違いが認められたことから、今後はこれらの違いが各動物種に散布された種子の発芽や、その後の実生の定着にどのように影響を及ぼしていくかについて、検証していく必要がある。


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