| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-154  (Poster presentation)

人工林風倒跡地の二次遷移にともなうシカ採食圧下での種組成変化

*吉川正人, 中田真菜, 瀬川芽衣, 豊田明日香, 加藤絵里子, 相場芳憲(東京農工大学)

 富士山南麓の人工林は,1996年の台風で大規模な風倒被害を受けた.その一部では,風倒木の集材後に残材を集積・放置し,その間に広葉樹を植栽した後,できるだけ自然の遷移にまかせた森林復元が試みられている.しかし,この地域ではシカの生息密度が高いため,採食圧が遷移の進行に強い影響を及ぼしている可能性がある.本研究では,シカの高い採食圧のもとにある二次遷移初期の種組成の特徴を,風倒被害を受けていない周囲の森林群落との比較によって明らかにした.2000~01年に風倒跡地2ヶ所に調査区を設置し,以後2016~17年までおおむね3年ごとに種組成の調査を行った.比較対象として,風倒被害を受けなかったブナ林にも調査区を設け,5~6年ごとに4回の調査を行った.風倒跡地では,ヤブウツギ,クサギなどの低木とススキが密生する時期を経て,風倒被害から20年後までに,ホオノキ,ミズキなどが林冠を構成する幼齢林が形成された.遷移の過程には地表の状態によって違いがみられ,放置枝条の被覆面積が大きい調査区では,クサギを主とした先駆性木本の優占度が高くなり,初期の段階から木本種や林床生草本の種数が多かった.これに対し,放置枝条の被覆面積が小さい調査区では,ススキの繁茂が著しく,初期には草地生の草本種が多く出現した.また,風倒跡地では不嗜好植物のシロヨメナが大幅に増加していた.一方で,ブナ林内ではシカの採食によって消失したコアカソ,コクサギなどの低木性樹種が,風倒跡地には残存していた.さらに,ブナ林内では消失したアズマレイジンソウ,イヌヤマハッカなどの高茎草本や,ヘビノネゴザなどのシダ植物も生育していた.これらのことから,風倒跡地では放置枝条による足場の不安定さや遷移初期の低木の密生がシカの侵入を抑制し,シカに採食されやすい植物にとってのセーフサイトとなっている可能性が示唆された.


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