| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-190  (Poster presentation)

3Dモデルを用いた着生植物の分布調査手法の開発

*丸尾文乃, 和田直也(富山大極東センター)

 北方林や熱帯雨林などの森林生態系において、樹幹に着生している植物(主に蘚苔類・地衣類)は生産者として、物質循環への寄与(e.g., Boucher & Nash 1990)、動物の餌資源、巣の材料(e.g., Gerson & Seaward 1977)等の機能的役割を果たしている。これら着生植物の宿主木での分布は、宿主木の樹種、樹形や樹齢によって形成される微小環境に左右されるとされている(e.g., Ojala et al. 2000)。これまでの研究で行われていた、現地での標本採取を主とした研究手法では、標本採取の物理的限界や野外での調査時間が長いといった課題があったため、研究対象となる宿主木は少数であった(e.g., Esseen & Renhorn 1996)。我々は、より多くの宿主木でのデータ採取を可能にするため、先行研究で行われている研究手法より簡便かつ短時間の野外調査が可能な着生植物の分布調査手法の開発を目指し、カメラの撮影画像から3次元データ(3Dモデル)を取得し、着生植物の分布状況(位置、面積等)を推定する手法を開発した。
 これまで、富山大学五福キャンパス構内に植栽されているクロマツ(Pinus thunbergii Parl.)、ソメイヨシノ(Cerasus x yedoensis (Matsum.) Masam. & Suzuki ‘Somei-yoshino’)、ユリノキ(Liriodendron tulipifera L.)の樹幹を地面から高さ約2 mまでを網羅的にデジタルカメラで撮影し、その撮影画像を用いて樹幹の3Dモデルを取得した。この3Dモデルから計測した面積の精度を検証したところ、誤差は平均1.5 %であることが分かった。3Dモデル上において、ピクセルベースで植生(蘚苔類・地衣類)と非植生を区分し、蘚苔類と地衣類の着生面積をそれぞれ求め、宿主木の樹種の違い、樹幹の方位が着生植物の着生面積に与える影響について検討した。その結果、樹種・方位の違いによって着生面積が大きく異なることが確認された。3Dモデルを用いた本手法により、従来よりも簡易的に着生植物の分布状況を調べることが可能となった。


日本生態学会