| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-197  (Poster presentation)

ホストとパートナーは1対1か?:樹木個体における共生細菌の遺伝的多様性

*鍵谷進乃介(北大・環境科学院), 九町健一(鹿児島大・理学部), 内海俊介(北大・FSC)

相利共生関係は異なる生物が互いに利益を与え合う相互作用である。陸上植物のほとんどは根圏において微生物と共生関係を結んでいる。特に、窒素固定細菌と共生する根粒共生は、生態系内の窒素循環と密接に関わるため重要視されている。寄主植物が得られる共生利益は、共生細菌の遺伝的変異によって異なる。その変異は幅広く、宿主植物の成長や生存に対して、時に負の影響を与えることもある。そのため、共生細菌の遺伝的変異が共生相互作用の帰結に与える影響を理解することは、共生関係における共進化や生態系内の物質循環の理解に役立つ。先行研究の多くから、共生細菌の遺伝的変異は野外環境において普遍的に存在していることが確認されている。しかし、野外環境において植物1個体が共生している共生細菌の遺伝的組成は明らかにされていない。植物個体内における共生細菌の遺伝的組成は、共生相互作用における遺伝的変異を理解する上で必要な知見である。そこで本研究では、野外環境において植物個体と共生関係を結ぶ共生細菌の遺伝的多様性を解明するため、河畔林の主要な構成樹種であるケヤマハンノキと窒素固定細菌フランキアの根粒共生系を対象に野外調査を行った。まず、生息域スケールにおけるフランキアの遺伝的多様性を明らかにするため、北海道大学雨龍研究林内に生育するケヤマハンノキ稚樹から根粒を採取し、サンガーシーケンシングによりnifD-K遺伝領域の塩基配列を読み取った。その結果、比較的小さな空間スケールであってもフランキアの遺伝的多様性が高いことがわかった。この結果から、野外環境において、ケヤマハンノキ個体は多様なフランキア遺伝子型に晒されていることが示唆された。さらに、樹木個体内における共生細菌の遺伝的多様性を明らかにするため、ハンノキ1個体から複数個採取した根粒についてメタゲノム解析を行っている。発表ではメタゲノム解析の結果も踏まえて議論を行う。


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