| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-201  (Poster presentation)

EST-SSRマーカーを用いたサイカチマメゾウムシ国内個体群の遺伝的組成

*大林夏湖(京大・生態研センター, 東大・広域システム), 石川直子(東大・広域システム), 程木義邦(京大・生態研センター), 岡田泰和(東大・広域システム), 伊藤元巳(東大・広域システム), 嶋田正和(東大・広域システム)

ハムシ科マメゾウムシ亜科サイカチマメゾウムシMegabruchidius dorsalis は、国内産野生マメゾウムシ中最大で(約6~7mm) 、宿主樹マメ科サイカチの乾燥完熟種子を利用する年2~3化の昆虫である。関西・中部・関東・東北地方には、河畔や河岸段丘に生えるサイカチの分布記録があるが、サイカチは昔から石鹸や漢方薬、ご神木として崇められてきた経緯もあり、人為的な分布拡大も積極的に行われてきた。このため宿主樹と種子捕食昆虫の本州広域にわたる遺伝的構造の解明は興味深いテーマの一つである。近年、老木化や土地開発に伴ってサイカチが伐採され、サイカチおよびサイカチマメゾウムシの個体群サイズ縮小が懸念されている。このため、適切な遺伝マーカーを用いて両種の遺伝的多様性の現状を把握し、将来的な保全指針を出すことは急務である。本研究では、まず、サイカチマメゾウムシに特異的な核遺伝マーカー開発を行った。東京都武蔵野市井の頭恩賜公園に生育するサイカチマメゾウムシのオス1個体から全RNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いたRNAseq解析により、発現遺伝子の部分配列中のマイクロサテライト領域(EST-SSR)を対象に、ゲノムワイドなマーカー設計を行った。13遺伝子座の多型的な遺伝マーカーの開発に成功し,東京都相模原市原当麻個体群32個体を用いた集団遺伝学的解析結果は、平均アリル数 4.2 ± 0.4 (s.d.)、有効アリル数 2.5 ± 0.3、平均観察ヘテロ接合度 0.48 ± 0.06であった。このうち9遺伝子座を用い、東北地方、関東地方、関西地方で採集したサイカチマメゾウムシ9個体群で集団遺伝学的解析を行った。その結果を報告する。


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