| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-204  (Poster presentation)

ボルネオ熱帯雨林に共存する近縁樹種間のニッチの多様化

*奥野聖也(大阪市大・院理), 殷亭亭(大阪市大・院理), 名波哲(大阪市大・院理), 伊東明(大阪市大・院理), 松山周平(酪農学園大・農食環境), Stuart Davies(CTFS), Sylvester Tan(CTFS), Mohizah B. Mohamad(サラワク森林局)

熱帯雨林には多くの近縁樹種が同所的に生育しているが、共存する近縁種の数には系統間で違いが存在する。その違いがなぜ生じるのかは明らかになっていない。一般的にニッチの類似する種の共存は難しいと考えられているため、多数の種が共存する系統ではニッチの類似度が低いことが予想される。そこで、本研究では共存近縁種数が多い系統と少ない系統でニッチ多様化プロセスに違いがあるか調べた。ボルネオ島ランビル国立公園に設置された面積52haの調査区に生育する、共存近縁種数が多い科(フトモモ科、フタバガキ科)と共存近縁種数が少ない科(アオイ科、トウダイグサ科)の4科について、分子系統樹を用いて3つのニッチ(life-formニッチ、demographicニッチ、habitatニッチ)の多様化プロセスを推定した。その結果、すべての科でlife-formニッチとhabitatニッチの放散が起きており、多様化プロセスは系統間で明らかな違いは見られなかった。一方で、フトモモ科とフタバガキ科ではdemographicニッチの放散が見られたが、アオイ科とトウダイグサ科では見られなかった。このことから共存近縁種の多い系統の共存にはdemographicニッチの多様化が重要である可能性がある。また、フトモモ科とフタバガキ科ではすべてのニッチが約1000万年前以降に多様化していたことから、共存近縁種の多い系統のニッチが、地球が寒冷化した中新世(Miocene)後期から鮮新世(Pliocene)の時期に急速に多様化したことが示唆される。


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