| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-206  (Poster presentation)

都市の生物多様性の評価に適した指標種とは?

*益子美由希, 荒金恵太, 舟久保敏(国総研)

 都市における生物多様性の確保は、良好な都市生活の維持に必要な生態系サービスを提供するだけでなく、住民が自然に親しむことで、生物多様性保全への意識を醸成し持続可能な社会形成に役立つという観点などから、近年その取組の機運が高まっている状況にある。都市における生物多様性の確保の取組を進めるにあたり、国土交通省が平成25年に策定した「都市の生物多様性指標(素案)活用の手引き」では、都市に生息・生育する動植物種数の状況に関する指標について、「地方公共団体が行政区域全体を対象とした動植物調査を実施することが容易ではない」ことから、「主要な地域の生態系が存在する地点に生息又は生育する種をリファレンス種として設定し、その変化を算定することが重要」という考え方を示している。しかし、国土交通省が平成26・27年度に行った調査の結果、動植物の生息・生育状況に関する十分なデータを有する地方公共団体が極めて少ない現状が明らかになり、地方公共団体における動植物のモニタリング調査の普及が今後の課題となっている。そこで、本研究では、都市の生物多様性の評価に適した指標種(リファレンス種)の設定の検討に資する知見を得ることを目的に、地方公共団体の緑の基本計画や生物多様性地域戦略において指標種又は調査対象となる生物種名の記載があった資料等39件を対象に、指標種の設定内容についての把握を行った。
 本発表では、その結果について紹介するとともに、当該調査結果をもとに、「生態学的に価値の高い緑地(樹林地、草地、水辺地)を評価するものさしとなる指標種」、「誰にでも分かりやすい身近な指標種」、「都市化傾度(自然度の高い状態から高度に都市化された状態に至る環境傾度)に応じた指標種」等、都市の生物多様性の評価に適した指標種の設定の考え方に関する論点を提示し、当該論点を満たす指標種を導くための分析の方向性について議論する。


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