| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-248  (Poster presentation)

人口および気候変動を考慮した将来土地利用シナリオの構築

*藤田知弘(国立環境研究所), 有賀敏典(国立環境研究所), 大橋春香(森林総合研究所), 肱岡靖明(国立環境研究所), 深澤圭太(国立環境研究所)

はじめに:
土地利用の変化は生物のハビタットを改変し、生物多様性の脅威となりうる。今後おこりうる土地利用を予測することは生物多様性保全にとり、貴重な情報を提供することとなる。先行研究で、人口や気候変動が土地利用変化に与える影響を検討した例は少ない。そこで本研究では日本全土を対象に人口および気候変動を加味し、2100年までの土地利用変化シナリオを構築した。

手法:
本研究では機械学習の一種であるランダムフォレストを用い、土地利用シナリオを構築した。分析ではまず、1985年~2005年の実際の土地利用変化(水田・その他農地・森林・荒地・建物用地・その他人工的土地利用)と人口・気候値(暖かさの指数、最寒月最低気温、夏季降水量、冬季降水量)及び地形要因等の関係を分析し、学習モデルを構築した。ここで得られたモデルと人口および気候予測値を用い、土地利用の予測を行った。人口予測値については出生数比較(出生高位・中位・低位)と分布パターン比較(均質・集中)の全5シナリオを用いた。気候予測値についてはRCP2.6, 4.5, 8.5の全3シナリオを用い、分析した。

結果:
土地利用の実測値(1985年~2005年)と同時期の予測値との間には高い相関がみられ、構築したモデルは高い精度で土地利用を予測できていることが明らかになった。2100年まで土地利用を予測したところ、2005年に比較し、水田については全シナリオで減少すると予測された。また、気候シナリオ間では予測値に大きなちがいはみられなかったが、人口シナリオではちがいがみられた。これに対し、その他農地については人口シナリオより、気候シナリオで予測値に大きな違いみられた。RCP2.6ではその他農地は2005年に比較し、減少すると予測されたが、RCP8.5では約10%の増加が予測された。以上の結果は土地利用における変化のドライバーとし、人口および気候値の重要性を示すものある。


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