| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-267  (Poster presentation)

大阪府の外来鳥類ソウシチョウの繁殖分布:市民参加型調査の結果

麻野浩(大阪鳥類研究グループ), 稲葉満里子(大阪鳥類研究グループ), 熊代直生(大阪鳥類研究グループ), 斉藤健(大阪鳥類研究グループ), 高石良子(大阪鳥類研究グループ), 藤田俊兒(大阪鳥類研究グループ), 藤田美智子(大阪鳥類研究グループ), *和田岳(大阪市立自然史博物館, 大阪鳥類研究グループ)

 特定外来生物であるソウシチョウは、1980年代以降日本各地に生息地を拡げた。大阪府では、2003年に初めて大阪府最北部の能勢町で繁殖期に確認され、その後、北摂山地や金剛山地、生駒山地と分布を拡大したと考えられる。しかし、近年の繁殖期の分布状況には不明な点が多かった。そこで、2015年と2016年の繁殖期(5月〜7月)に、大阪鳥類研究グループの調査企画として、市民参加で大阪府の山林のセンサスを行いソウシチョウの繁殖分布を調査した。
 2015年は、生駒山地の中南部、金剛山地、和泉山脈東部と大阪府東南部の山林を主に調査した。2016年は、残る生駒山地北部、和泉山脈中西部、北摂山地の大部分を調査した。調査したのは2年間で40コース、調査参加者は10名だった。
 その結果、ソウシチョウは、生駒山地中南部から金剛山地の大阪府東南部には、すでに広く高密度で分布している一方で、生駒山地北部には2015年から2016年にかけて分布を拡大したことが伺えた。大阪府南部の和泉山脈は、東部に低密度で生息しているのみで、中西部ではまだソウシチョウの囀りは確認されなかった。
 大阪府で最初にソウシチョウが記録された能勢町をはじめとする北摂山地には、能勢町に広く分布している以外は、まばらにしか分布していなかった。北摂山地は大阪府で唯一ニホンジカが生息しており、ニホンジカの密度が高い場所ではササが見られなくなっている。ニホンジカによるササの減少が、北摂山地でのソウシチョウの分布に影響している可能性がある。
 ソウシチョウと同様、繁殖期のササへの依存が強いウグイスの分布とも関連させつつ、ソウシチョウの分布を紹介する。


日本生態学会