| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-08  (Poster presentation)

狭い孤立林に生息するホンドタヌキの食性の季節変化~東京都練馬区武蔵学園における調査~

*飯島昌弘(私立武蔵高校)

孤立林である武蔵学園(東京都練馬区)にはホンドタヌキの生息が確認されている。しかし、学園は面積が7.8haと他のタヌキが生息する孤立林に比べて狭い。本研究は昨年行った学園に生息するタヌキの秋から冬における食性調査に続けて行った。昨年の研究で学園のタヌキは秋から冬にかけて構内で食べ物を賄いうると分かったため、本研究ではデータのない春から秋にかけて調査を行い、昨年までの研究と合わせ、学園に生息するタヌキは1年間狭い構内で食べ物を賄えるか推測することを目的にした。糞は2016年の5月から11月にかけて構内2か所のため糞から採取し、58個を分析した。糞は5㎜メッシュで濾したのち、目視で種子、昆虫片、鳥類、人工物、その他に分類し、昆虫片は乾燥重量も計測した。その結果、種子は11種類同定できた。各月最も多い種子は5月、6月はソメイヨシノ、7月はほとんど出ず、8月はエノキ、9月はムクノキ、10月はマメガキ、11月はカキノキであった。これらの木はカキノキを除いて全て構内に複数本生えている。各月の糞1個当たりの種子の種類数は8月が低く、5月,11月が高かった。昆虫片は5月から11月全ての月で確認された。出現した昆虫はアオドウガネ、コクワガタ、カナブン、セミの幼虫などであり、これらの昆虫は学園内にも生息している。糞1個当たりの昆虫片の重さの平均値は7,8月が高く、11月が低かった。以上より本研究から学園のタヌキは果実の少ない7,8月は昆虫を主に、果実の豊富な11月は果実を多く食べるという食性の季節変化が推測された。また、糞に含まれていた種子や昆虫は構内に存在するものがほとんどであり、学園のタヌキは年間を通して構内で採餌の多くをしている可能性が高く、7.8haという狭い孤立林内でも1年中食料を賄うことは可能だと推測された。


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