| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-30  (Poster presentation)

新舞子干潟におけるハクセンシオマネキUca lacteaの生態

*石原統哉, 大谷空, 川口隼斗(兵庫県立龍野高等学校)

 私たちは新舞子干潟でハクセンシオマネキの性比について研究した。まず,ハクセンシオマネキとはスナガニ科で,学名はUca lacteaである。オスの片方の爪が巨大で,メスの爪は両方小さい。繁殖期は6月~8月である。また,兵庫県版レッドリストに指定されており,準絶滅危惧種である。調査地の新舞子干潟は,兵庫県たつの市にある全国でも有数の遠浅の干潟である。そして,研究の動機は,表層においてハクセンシオマネキのオスがメスより多かったことから,ハクセンシオマネキの性比について興味がわいたからだ。
 表層においてコドラート(50㎝×50㎝)を計50カ所に設置し,コドラート内の雌雄と個体数を調査したところ,繁殖期を通してオスとメスの比が2:1になった。そこから2つの仮説を立てた。1つ目は,ハクセンシオマネキはオスが多い。2つ目は,オスとメスの比率は1:1だが,表面に出現する個体はオスのほうが多い。 どちらの仮説が正しいか確かめるため,計17カ所のコドラート内を10㎝ごとの層に掘分け,層ごとのハクセンシオマネキの雌雄や個体数,体サイズを調べた。結果は,繁殖期・非繁殖期共に,オスとメスの比はほぼ1:1になっていた。また,抱卵したメスは深いところにいる傾向があることが分かった。この結果より,2つ目の仮説が正しい可能性が高いと考える。また,抱卵したメスは深いところで競争や被食を避けると考える。
 以上より表層の個体数の性比に偏りが見られたのは,雌雄の利害から生じる行動の差と考えた。オスは摂食や求愛行動,縄張りの維持のために主に表層で活動する。非抱卵のメスは摂食と繁殖相手を探すため少しの間表層で活動し,それが終われば被食を避けるために砂中に戻る。抱卵メスは,摂食のときのみ表層に出現し,あとは砂中で活動して被食を避け卵を守る。このような行動の差により,表層ではオスに性比が偏るが,個体群全体ではオスとメスは1:1になったと考えた。


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