| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-42  (Poster presentation)

フギレデンジソウの研究 ~小葉が”ふぎれる”しくみの解明~

*前田萌絵, 坪倉妃那(清心女子高等学校)

フギレデンジソウはインドネシアやオーストラリア原産の水辺や湿地に分布するデンジソウ科の植物である。日本では自生してはいないが、観賞用植物として市販されている。フギレデンジソウは4枚の小葉を持ち、小葉の先端には切れ込みが入っている。また、この切れ込みは小葉の成長過程で形成され、成長するとともに葉の形が変化していく。私たちはこの現象を種の名前から「ふぎれる」と呼び、ふぎれる仕組みについて調べた。他の植物でも、花弁や葉などがふぎれているものは存在するが、このふぎれが自然発生的に生じるしくみを明らかにするために、先端の組織が細胞死を起こして取り除かれていく「細胞死仮説」と、将来、切れ込みの先になる部分の細胞の成長が止まる「成長抑制仮説」の2つを考え、それぞれ検証を行った。
細胞死仮説の検証ではアポトーシスを確認するため、葉の各部分からDNAの電気泳動を行ったが、全ての部分からラダー化が見られ、葉全体で常に細胞死を起こしているという事が分かった。
成長抑制仮説では、過去に先輩方がされていたデンジソウの研究で、アクアポリン遺伝子の発現量が多いほど、細胞の成長が促進されるという結果があり、このことを利用して実験を進めた。小葉からmRNAを抽出し、逆転写後、PCRを行って、その後電気泳動を行い、バンドの濃さからアクアポリン遺伝子の発現量を比較した。今回は葉元、葉の中心、2つにふぎれた葉先、3つにふぎれた葉先の4つの部位に分けて実験した結果、葉先にアクアポリン遺伝子が多く発現していることが分かった。また、葉先のうちで2つにふぎれたものと3つにふぎれたものを比べると、3つにふぎれた葉先の方がより多く発現していた。これらの実験結果より、アクアポリン遺伝子の発現量が多いほど葉先が分岐しやすくなるのではないかと考える。今後は切れ込みの谷部分と山部分のアクアポリン遺伝子の発現量に偏りがあるのか調べていきたい。


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