| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


シンポジウム S12-5  (Presentation in Symposium)

湧水・非湧水河川における餌資源量とコウモリ類の活動量の季節変化

*Takumi AKASAKA(帯広畜産大学), Jyunjiro Negishi(北海道大学), Akira Terui(Univ. of Minnesota), Yusuke Tamada(株式会社 長大), Futoshi Nakamura(北海道大学)

生態系間の連結性は、複合生態系の維持において重要な不可欠である。これまでにも、陸域と水域(河川)の相互作用系が生物に与える影響は様々な研究で明らかにされてきた。しかし、これら連結性に関わる多くの研究は、対象河川の有する性質にあまり着目してこなかった。河川には、規模や形状のみでなく、水温や安定性など河川によって様々である。例えば、湧水河川は非湧水河川に比べて出水等の攪乱の影響を受けづらく、年間を通して水温も安定して低い。このため、湧水河川と非湧水河川では、水生昆虫(積算水温が羽化タイミングに影響する)の羽化タイミングが異なってくる可能性がある。これは、湧水河川の存在が、同一景観内において陸域動物の餌資源量の発生タイミングを多様化させている可能性を示す。本発表では、同一景観内に存在する湧水河川と非湧水河川を対象に、両河川タイプにおける餌資源量の季節変化を明らかにし、それらが食虫陸域動物であるコウモリ類の活動に与える影響を明らかにした。北海道に存在する湧水および非湧水河川を各2河川抽出し、各河川に3地点ずつ調査地点を設けた。6月~10月まで各月1週間、コウモリ類の活動量と羽化水生昆虫量を計測した。結果、羽化水生昆虫量は、春季と秋季には湧水河川で多くなるが、夏季では非湧水河川で多くなった。また、羽化水生昆虫量と同調するようにコウモリ類もまた、春季と秋季では湧水河川で活動量が多くなった。このことから景観内に存在する河川の性質が多様であることで、河川―陸域生態系間の連結性はより頑強になり、例えば、湧水河川が、景観内に存在することで、季節を通じて陸域動物の餌資源量を安定させていることを示唆する。


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