| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


シンポジウム S12-6  (Presentation in Symposium)

氾濫原の樹林化がもたらす鳥類分布変化

*藪原佑樹(北海道大学, 徳島大学), 山浦悠一(森林総合研究所), 赤坂卓美(帯広畜産大学), 中村太士(北海道大学)

上流に建造された貯水ダムは、土砂動態や洪水攪乱レジームの改変を通して氾濫原の景観変化(樹林化)をもたらす一要因として考えられている。樹林化は、砂礫性生物が依存して生息する砂礫河原を消失させるため、砂礫性生物の個体群減少をもたらすと予想される。そこで十勝平野の複数河川を対象に、氾濫原の樹林化による景観変化が、砂礫性、森林性鳥類にどの程度の個体数変化をもたらしうるかを推定した。まず、過去と現在の空中写真や衛星画像を基に植生図を作成し、貯水ダム建設前後での氾濫原景観の変遷を明らかにした。続いて、氾濫原に多数の調査地を設置して鳥類分布と植生面積の関係をモデル化した後、これらの植生図にモデルを適用することで、ダム建設前後での鳥類個体数の変化を推定した。その結果、ダム建設後に2河川で樹林化が生じており、特に大面積の砂礫河原のパッチが消失傾向にあることがわかった。さらに、個体数と生息地面積の関係が過去と現在で変化していないと仮定すると、樹林化によって森林性鳥類の個体数が増加した一方で、砂礫性鳥類の個体数は約4割減少したと推定された。この結果は、近年多くの河川で生じている土砂動態や洪水攪乱レジームの変化の影響が、氾濫原の景観変化を通して陸域を利用する生物にまで波及しうることを示唆している。


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