| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


シンポジウム S16-8  (Presentation in Symposium)

海洋生物多様性の現状と将来予測、保護区選定

*仲岡雅裕(北海道大学)

「地球表面の7割を占める海洋にはいったい何種の生物がいて、どのように分布しているのだろう?」という根本的疑問に対して、陸上動物である人類が行える海洋調査は極めて限られており、その解答はなかなか得られなかった。しかし、21世紀に入り、Census of Marine Lifeなどの国際大型プロジェクトの実施や、その成果であるOBIS, WoRMSなどの海洋生物多様性に関する各種グローバルデータベースの構築、さらにはリモートセンシング・GISや大規模統計解析法等の技術的発展により、海洋生物多様性の全体像がようやく明らかになりつつある。本講演では、主に日本周辺および東~東南アジア海域でのグローバルデータベースを用いた海洋生物多様性の研究について、私たちのグループの取り組みを紹介したい。2011~2015年に実施された環境省環境研究総合推進費S-9の海域班グループにより、アジア海域を中心に2,045,896件の新たな海洋生物の分布レコードが記録された。既存のデータと合わせて、海洋保護区の設定の前提となる重要海域(EBSA)を定量的・客観的に評価する方法を確立し、東~東南アジア海域に適用して全海域の15%をEBSAとして選定したところ、現行法で設定されている海洋保護区とは4.3%しか一致しないことが判明した。また、気候変動シナリオに基づく主要海洋生物(サンゴ、大型海藻類、動物プランクトンなど)の分布の将来予測の結果では、2100年までに各種の分布が大きく変わることが予測された。例えば、北日本のコンブ目海藻を対象とした将来予測では、なりゆきシナリオ(RCP 8.5)のもとでは、分布南限が約400 kmも北上する種もある。このような将来の分布変動も考慮した海洋保護区設計法についても検討を行った。


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