| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


シンポジウム S18-1  (Presentation in Symposium)

ここより永遠に -適応進化の永続性パラダイム-

*長谷川英祐(北海道大学大学院, 農学研究院, 環境資源学専攻, 生物生態・体系学講座, 動物生態学研究室)

ダーウィンが1859年に提唱した、「集団中で、時間あたりの増殖率が高い遺伝タイプが頻度を増し、集団を占める」、という自然選択説は,現在でも適応進化の基本説明原理である。しかし生物は増殖に、生物・物理環境を資源として必ず利用する。また、環境中の資源は必ず有限だが、自然選択の下では利用可能な資源が欠乏しても、それを使い、より増殖する遺伝タイプが増える。故に自然選択による適応の行き着く先は、必ず資源枯渇による「絶滅」である。実際には、生物は40億年前の発生以来絶滅していないので、絶滅を回避する機構の存在が予測される。本講演では、生物と利用資源の関係は、資源枯渇をもたらす「過適応」が進化した場合は絶滅して淘汰され、存続している関係は全て滅びないパラメータ範囲に留まる、という、平均適応度の最大化という従来の自然選択説の上位原理である「永続性パラダイム」を提唱する。また、集団中で増殖率の異なる2つのタイプが共に増殖する時、条件により、増殖率の高いタイプが絶滅し、低い者だけが生き残る場合があることを示し、自然選択が常になり立つわけではないことを示す。また、通常生物は群集の中で生きるが、生物関係の総体としての群集は、各生物が遺伝により子孫に同様な形質を伝えるため,関係は「遺伝する」。また、自然選択で適応が起こるので、関係は「変異する」。群集は増殖しないので、増殖指標を使った「選択」は定義できないが、各群集は「どちらが長続きするか(=滅びにくいか)」という競争を行っていると見なす事ができ、「永続性」を選択指標とすることで、群集の適応進化を考えることが出来る。その行き着く先は、「食う-食われる」といった現在片利関係とされている関係も含め、全生物関係が群集の永続性を高める、生物多様性を必要とする巨大な共生系に進化すると予測される。永続性パラダイムの予測とどのように検証するかについて述べたい。


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