| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


企画集会 T07-4  (Presentation in Organized Session)

外来病マツ枯れの危険域を推定する:種分布モデルを用いた予測と気候変動の影響評価

*松橋彩衣子(森林総研), 平田晶子(森林総研), 秋庭満輝(森林総研), 中村克典(森林総研), 高野宏平(長野環保研), 小黒芳生(森林総研), 中尾勝洋(森林総研), 松井哲哉(森林総研)

樹木の伝染性病害はしばしば広域に及び、生態系や人間社会に甚大な被害をもたらす。こうした感染症の潜在的な発生危険域を予測することは、効率的な森林管理に大きく貢献する。マツ枯れ(マツ材線虫病)は、侵略的外来生物マツノザイセンチュウによって生じる感染症の一つであり、20世紀初頭から現在にかけて全国的に拡大し、生態系や経済に深刻なダメージを与えてきた。近年では世界的な拡大の危険性も指摘されている。そこで本研究では、国内を対象に、マツ枯れの発生と関連性の高い気候要因を特定し、発生危険域を従来の手法以上の精度で予測することを目的とした。予測モデルの構築のため、マツ枯れの発生地点情報及び全国の気候データを収集した。地点情報は、異なる目的でとられた三つの地域(全国、岩手県、霧島山)におけるデータを用いた。これらを用いて点過程モデルを構築し、危険域を1kmスケールで推定した。モデルで予測された危険域は、実際のマツ枯れの分布とよく一致していた。また、気温の貢献度が最も高かったが、その他の気候要因も貢献していることが示された。今回の予測結果は、従来の予測手法よりも高い精度を示しており、各地域における森林管理への今後の活用が期待できる。また、マツ枯れが今後広がりうる他国においても、危険域について重要な示唆を与えるであろう。


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