| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


企画集会 T16-1  (Presentation in Organized Session)

南硫黄島総合学術調査報告会 趣旨説明

*堀越和夫(小笠原自然文化研究所)

 小笠原諸島の南硫黄島は過去に人間の利用履歴がなく、外来生物もほとんど侵入していない絶海の孤島である。この島は原生自然環境保全地域として上陸が制限されており、その生態系は真に原生状態を維持している。このような島は国内のみならず世界的にも希有であり、島嶼生態系のオリジナルな状態を解明する貴重な存在であるとともに、小笠原諸島の保全上の目標像を示す場所でもある。
 南硫黄島は小さいながらも乾燥した海岸環境から、標高900mを超える雲霧林まで変化に富む環境を持つと同時に、淡水系を有しないという特徴を持つ。また、小笠原諸島の北部を構成する小笠原群島は数千万年の歴史を持つが、南硫黄島を含む火山列島の成立は数万年から数十万年前と新しく、島嶼における進化の初期段階が見られることも注目される。
 この島で2017年に史上4回目、10年ぶりとなる総合的な生態系調査が実施された※。その結果、独自の生物進化や原生状態の生物間相互作用、人為のない状況での環境変化などが明らかになってきた。本集会ではこれらの成果を紹介し、島嶼生物学における南硫黄島の持つ価値について議論を深めたい。

※本調査は、東京都、首都大学東京、日本放送協会(NHK)が連携して、2017年6月13日から6月28日に実施した。


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