| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) F01-01  (Oral presentation)

ニホンジカにより長期的採食を受けた林床に設置した防鹿柵内における植生の回復過程
Recovery process of vegetation within a deer fence installed on a forest floor subjected to long-term browsing by sika deer

*Kayu IKEDA, Shingo Ishikawa, Motoki Higa(Kochi Univ.)

四国山地三嶺山域さおりが原(標高1160m)ではニホンジカ(以下シカ)の過剰な採食圧により衰退した植生を回復させることを目的に2008年から2016年にかけて5箇所に防鹿柵が設置された。柵は川を隔てて北側に2箇所(2008年,2016年)と南側に3箇所(2011年,2012年,2016年)にそれぞれ設置されたが、2016年柵は前年の柵を囲う、または隣接するかたちで設置された。本研究では、5箇所の防鹿柵を対象に2種類の植生調査を行った。1つ目は、各柵内において2m×2mの方形区を5箇所設置し、計25箇所の方形区を植生調査した。2つ目は、早く設置した方の柵の境界を基点に隣接する柵の柵内において境界から遠ざかるように、幅1m,長さ20mの帯状調査区を計4本設置し、さらに調査区を1m×1mの計20箇所の方形区に区切り、計80箇所を植生調査した。調査の結果、早く設置した柵ほど柵内の植被率,種数ともに高く、マネキグサなどの希少種の回復も確認された。また、初期に設置された柵に比べ8年間のシカの採食を受けた2016年設置の柵に関しても、種数,植被率の増加が見られ、防鹿柵の植生保護効果が認められた。また、帯状調査区の調査結果からは、設置年の早い柵において柵の外側に向けて個体の進出が見られ、柵内の植生が回復した後、周辺の採食圧が排除された場合は植生の回復範囲が柵内にとどまらず拡大していくことが予想された。なお、回復過程としては、回復した柵から進出、シカの採食下で残存していた個体の一部から成長、埋土種子から発生、柵外から散布されたものから発生、の四つの過程が考えられる。今後、仮にシカの採食圧が林床植生に影響を与えない程度にまで減少した場合に、すでに設置されている柵から柵外へ植生が回復していくことが期待される。


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