| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) G03-02  (Oral presentation)

環境DNA分析を利用した六甲山地におけるヒダサンショウウオの生息実態調査
Habitat identification of Hynobius kimurae in Rokko mountains using environmental DNA analysis

*岸本祥(神戸市), 鈴木孝典(神戸市), 中村淑樹(神戸市), 齊藤博之(神戸市), 飯塚徹谷(ひょうご環境創造協会), 横田雅弘(ひょうご環境創造協会), 源利文(神戸大・院・発達)
*Akira Kishimoto(Kobe City), Takanori Suzuki(Kobe City), Toshiki Nakamura(Kobe City), Hiroyuki Saito(Kobe City), Tetsuya Iiduka(HEAA), Masahiro Yokota(HEAA), Toshifumi Minamoto(Kobe University)

神戸市では、平成29年10月に制定した「神戸市生物多様性の保全に関する条例」に基づき、「希少な野生動植物の保全」、「外来種等による生態系等に係る被害の防止」等、自然共生社会の実現に向けた施策を推進している。本報告では、希少な野生動植物の保全のための調査の一環として、本市レッドリストのAランク種であるヒダサンショウウオについて、環境DNA分析手法を用い、既知生息地における存在確認調査を実施するとともに、既知生息地に共通する環境条件から新たな生息地の発見を試みた結果を示す。まず、既知生息地の標高・平均傾斜角度・植生などから本種の生息に適した環境条件を抽出し、条件に適合する7エリア61地点で採水し、環境DNA分析を実施した。その結果、3エリア22地点から本種のDNAが検出された。次に、DNAが検出された22地点の上流域で生体確認調査を実施した結果、10地点で生体が確認できた。この10地点中、2地点は今回の調査で新たに生息が確認された地点である。一方、生体が確認できなかった12地点中、8地点では事前調査にて卵のう及び成体が確認されており、事前調査結果も含めると、DNAが検出された22地点中、18地点で生体が確認されたことになる。
今回の調査では、ヒダサンショウウオの既知生息地の環境条件から候補地を絞り込み、DNAが検出された地点を重点的に調査することにより、その生息を確認するとともに、新たな生息地も発見することができた。このように、環境DNA分析手法は、生息確認が容易でない希少種の生息調査に極めて効果的であることが確認できた。また、希少種の保全・育成のため、希少種が生息する環境条件を保全・創造していく必要性も示唆された。神戸市は、大都市としては稀な自然環境を有している。今後、条例の趣旨を実現していくため、環境DNA分析手法等新たな手法も活用しつつ、希少な野生動植物の保全をはじめとした神戸市ならではの生物多様性の保全に努めていきたい。


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