| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) K02-05  (Oral presentation)

グリホサート抵抗性オオホナガアオゲイトウの遺伝子増幅は適応度に影響するか? 【B】
Does gene amplification confer fitness cost in glyphosate-resistant Amaranthus palmeri? 【B】

*下野綾子(東邦大学), 浅井元朗(農研機構)
*Ayako Shimono(Toho Univ.), Motoaki Asai(NARO)

 グリホサート剤は2000年代に世界で最も使用された除草剤とされている。除草剤抵抗性作物の普及によるグリホサート使用量増加にともない、抵抗性雑草の進化が深刻な問題となっている。中でもグリホサート抵抗性のヒユ科ヒユ属オオホナガアオゲイトウは、2005年に報告されて以降、アメリカ合衆国で急速に蔓延した。この報告から10年もたたずに、我が国の主要穀物輸入港湾の一部でも抵抗性個体が定着し、この5年間抵抗性個体の割合は微増傾向で推移している。
 オオホナガアオゲイトウのグリホサート抵抗性メカニズムの1つが、グリホサート剤の標的遺伝子EPSPS遺伝子の増幅による。増幅領域は約300kbにおよびEPSPS以外にも様々な遺伝子や転移要素が含まれている。従って抵抗性個体の様々な遺伝子の過剰発現やゲノムサイズの増加が、個体の適応度に影響を及ぼす可能性が考えられる。本研究ではオオホナガアオゲイトウの除草剤抵抗性形質の拡散可能性を評価することを目的とし、抵抗性形質の後代への遺伝と増幅領域のコピー数が発芽や初期生育に及ぼす効果を評価した。
 供試した抵抗性個体と感受性個体の生産種子の発芽率はそれぞれ平均63%および87%と、抵抗性個体のものが低い傾向が見られたものの、個体によるばらつきが大きく有意差は見られなかった。抵抗性個体の後代の9割が増幅領域を有していたが、コピー数と初期成長(バイオマス)には有意な関係は見られなかった。今後は増幅した遺伝子の実際の発現量や、野外条件での生残や成長量などを比較していく必要がある。


日本生態学会