| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) M02-04  (Oral presentation)

安定同位体が明らかにする熱帯のアリグモにおける植物性食物の重要性 【B】
Stable isotope analysis reveals the importance of plant-based diets for tropical ant-mimicking spiders 【B】

*兵藤不二夫(岡山大), 山崎健史(首都大), 岩浅拓也(京大), 市岡孝朗(京大), 遠藤知二(神戸女学院大), 橋本佳明(兵庫県立大)
*Fujio HYODO(Okayama Univ.), Takeshi Yamasaki(Tokyo Metrop. Univ.), Takuya Iwasa(Kyoto Univ.), Takao Itioka(Kyoto Univ.), Tomoji Endo(Kobe college), Yoshiaki Hashimoto(Univ. of Hyogo)

アリに擬態するクモ(アリグモ)は、モデルに似ることで捕食を回避するベイツ型擬態の例としてよく知られている。アリグモの食性について、先行研究では植物質の食物(花外蜜腺など)の重要性が指摘されている。しかしながら、植物質の食物がアリグモにとって主要な食物資源なのか、補助的なエネルギー源なのかよくわかっていない。そこで我々はマレーシアの熱帯雨林とタイの乾燥季節林で採集されたアリグモ(ハエトリグモ科Myrmarachne属6種、Agorius属1種、ハチグモ科2種)の炭素窒素同位体比を測定した。また、比較対象としてこれら2つの調査地で採集された複数のアリ種の同位体比を測定した。その結果、アリグモの窒素同位体比は一般的に花蜜食性や雑食性のアリと同様の低い値を示し、その窒素同位体比はアリグモ種間で有意に異なっていた。いくつかの種(Myrmarachne sp. Hなど)は花蜜食性アリと同様に低い窒素同位体比を持ち、他の種(Myrmarachne maxillosaなど)は雑食性のアリと同じような窒素同位体比を持っていた。アリグモの炭素同位体比は種間で有意な違いはなかったが、捕食性のアリよりは花蜜食性や雑食性のアリと似た値を示していた。これらの結果は植物質の食物がアリグモの栄養源として重要であること、そしてその重要性はアリグモ種間で異なる可能性を示している。


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