| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-031  (Poster presentation)

埋土種子の減少と種子散布制限は新しく建設されたスキー場の草原性植物組成を決定する 【B】
Seed bank loss and dispersal limitation determine grassland plant composition on newly constructed ski-runs 【B】

*矢井田友暉(神戸大学), 井上太貴(筑波大学), 田中健太(筑波大学), 丑丸敦史(神戸大学)
*Yaida Yuki(Kobe University), Taiki Inoue(University of Tsukuba), Kenta Tanaka(University of Tsukuba), Atushi Ushimaru(Kobe University)

近年、半自然生態系において、伝統的な土地利用が集約的な利用に変更されること、利用自体が放棄されてしまうことによってその生物多様性が急激に減少している。特に、火入れ、草刈り、放牧などの管理が粗放的に行われてきた半自然草原では、この集約的土地利用や放棄による草原性生物の多様性への負の影響が顕著であると言われている。
スキーリゾート開発は高山帯から山岳地帯かけて行われており、重機による土壌の侵食や、森林伐採、人工降雪等による植生の劣化を引き起こす一方で、半自然草原を維持している近代的な土地利用といえる。これまでの我々の調査から、スキー場草原の中には伝統的な牧草地をそのまま利用したものと放牧地が一度放棄され森林化した後に森林伐採によって建設されたものがあることが分かり、在来の草原性植物の多様性が、継続利用したスキー場草原よりも森林を経由したスキー場草原で低いことが判明した。また、スキー場に隣接している森林には草原性植物が殆ど生育していないことも分かった。これらの結果を受け、森林を経由したスキー場草原も、25―50年の期間年1回の草刈り管理により維持されてきた半自然草原であるにもかかわらず草原性植物の多様性が低いのは、森林化およびスキー場建設時に植物自体が消失するだけでなく埋土種子までもが失われたことと、その後の植生が成立する過程で種子の散布制限が起きているためだと考えられる。
本研究では、2つの土地利用履歴を持つスキー場草原およびそれらに隣接している森林の埋土種子組成を調べるために、表層土壌を早春に採取し、大学構内のビニールハウスで7ヶ月間の播種実験を行なった。埋土種子を調べることにより、森林化による埋土種子の喪失と、草原性種の種子の多様性およびそれらの散布形態の違いが、森林を経由したスキー場に成立する植生を決定するのかを検討した。


日本生態学会