| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-043  (Poster presentation)

広葉樹林の皆伐地における萌芽と実生の競争
Growth and survival of stump sprouts and seedlings after clearcutting in a broadleaf forest

*小﨑惇平, 川口英之(島根大学)
*Junpei Ozaki, Hideyuki Kawaguchi(Shimane Univ.)

 広葉樹林の皆伐地において、実生の初期成長は種子に含まれる物質に制約されるが、萌芽は切株に蓄えた豊富な物質で初期の競争において有利である。萌芽の大きさや空間分布は、種子の発芽による実生からの更新に影響する。鳥取県西部の皆伐地において6年後までの実生と萌芽の樹高成長と空間分布を測定した。萌芽は切株からと地表付近の根からに区別した。切株からの萌芽全体を1個体とした。樹種を高木と低木に分けた解析も行った。
 平均樹高を1年後と2年後で比較すると、1年後では高木の切株萌芽が最も高く、実生は根萌芽や低木の切株萌芽よりも低かった。しかし実生は2年目の成長が大きく、2年後では高木の実生は低木の萌芽とほぼ同じ高さになった。3年後以降も高木の切株萌芽が最も高かったが、先駆樹種が多くを占める高木の実生が徐々に追いついた。
 L関数を用いて分布様式を解析した。2年後では高木の切株萌芽は互いに2から2.5m離れて分布した。低木の切株萌芽はランダム分布した。実生は集中分布した。実生と高木の切株萌芽は1m以下で排他的、2m以上で同所的であった。実生と低木の切株萌芽は独立であった。実生は高木の切株萌芽から1m以内では更新するのが難しく、それよりも離れた場所に集中斑を形成し、集中斑は高木の切株萌芽の間をうめるように形成されていた。高木の切株の近傍は旺盛な萌芽によって実生の発生または生残が抑制されたが、離れた場所は皆伐前に広がっていた樹冠がなくなり、実生の発生と成長に好適な環境が生じたと考えられた。6年後、実生では短い距離での集中度が低下し、密度依存的な死亡が起こったと考えられた。切株萌芽は高木、低木ともにほとんど死亡しなかったので変化はなかった。皆伐前の森林の種組成とその配置によって、皆伐後の萌芽更新だけでなく、実生更新がどのように起こるかを予測できる可能性が示された。


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