| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-046  (Poster presentation)

ボルネオ熱帯低地林における伐採後地上部バイオマス回復速度の空間変異
Estimating the recovering speed of above ground biomass after selective logging in Bornean lowland tropical forest

*竹重龍一(京大・農・森林生態), 園田隼人(京大・農・森林生態), 藤木庄五郎(京大・農・森林生態), 青柳亮太(京大・農・森林生態, スミソニアン熱帯研), 北山兼弘(京大・農・森林生態)
*Ryuichi TAKESHIGE(Kyoto University), Hayato SONODA(Kyoto University), Shogoro FUJIKI(Kyoto University), Ryota AOYAGI(Kyoto University, STRI), Kanehiro KITAYAMA(Kyoto University)

 FAOの報告によるとボルネオ島は現在最も森林減少が顕著な場所の一つとされており、森林の大半を占める木材生産林における適切な管理及び森林回復過程の理解が森林資源を持続的に利用する上での鍵となっている。近年熱帯林で二次遷移における地上部バイオマス(AGB)回復に関する研究が盛んに行われているが、多くはプロットレベルでの研究で、広域の森林管理する上で重要な景観レベルでの研究例は少ない。熱帯林においては択伐と呼ばれる選択的伐採により木材が抜き切りされ、残存木からの更新によって森林は回復するとされてきたが,施業の方法によってはレジームシフトが起こりAGBが回復しない現象も知られている。また伐採道周辺でのAGB回復速度は特に低いとされている。
 本研究ではマレーシア・サバ州低地混合フタバガキ林において伐採履歴の異なる隣接した2つの森林管理区でのAGB回復速度推定・およびその空間変異についてGISを用いた解析を行った。景観レベルのAGB量は、プロットレベルのAGB量を目的変数、Landsat衛星画像より得た分光反射特性・バイオマス指標値を説明変数として重回帰で得られたモデルを画像に外挿することで推定した。また年度の異なる画像間で差分をとることによってAGB回復速度を推定した。伐採後のAGB回復速度に重要な要因を明らかにするために、AGB回復速度と伐採前バイオマス量・伐採道からの距離について解析を行った。さらにAGBが伐採後回復していないと思われる場所を抽出し、その場所の空間的な特徴を伐採道からの距離という観点で解析した。
 その結果、伐採前のバイオマス量が多いほどAGB回復速度が高く、伐採道からの距離が近いほどAGB回復速度が低い傾向があった。またAGBが伐採後回復していないと思われる場所は伐採道周辺に多かった。本研究により、択伐後のAGB回復には空間変異が存在し、伐採道がAGB回復に大きな影響を与えることが示唆された。


日本生態学会