| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-048  (Poster presentation)

茨城県桜川市におけるヤマザクラ・カスミザクラの更新状況 【B】
Regeneration patterns of Cerasus jamasakura and C. leveilleana in sakuragawa city, Ibaraki prefecture, Japan. 【B】

*勝田翔, 佐伯いく代, 上條隆志(筑波大学)
*Kakeru KATSUDA, Saeki Ikuyo, Kamijo Takashi(Tsukuba Univ)

茨城県桜川市は古くから山桜の名所として知られており、山桜をシンボルとした町づくりが進められている。一方、日本各地では伐採を伴う里山管理が衰退傾向にあり、山桜の更新適地の減少が懸念される。そこで本研究では、桜川市において山桜が将来も継続して生育できる環境を把握するために、ヤマザクラ及びカスミザクラ(以下ヤマザクラ類)の幼木の生育状況と森林特性との関係性を分析した。
 桜川市東部の山地から、更新が起こっていると予想された特徴の異なる4つの調査サイトを探索的に選び、それぞれ20 m×20 mのプロットを3つずつ設置した。その後、プロット内に生育する胸高直径(dbh)2 cm以上の樹木について種名とdbhを記録した。そのデータから、ヤマザクラ類の幼木の個体数と森林特性との関係を明らかにするために、一般化線形混合モデル(GLMM)を用いて解析を行った。解析は、応答変数にdbhが9 cm以下のヤマザクラ類(幼木)のプロットあたりの個体数を、説明変数に萌芽率、アカマツ枯死木数、シラカシの幹数、母樹の個体数、スギ・ヒノキの幹数を用い、サイトの違いをランダム効果として実施した。
 毎木調査の結果、3サイト、8つのプロットにおいてヤマザクラ類の幼木が記録された。GLMMによる解析では正の要因として萌芽率とシラカシ幹数、負の要因としてアカマツの枯死木数を含んだモデルが幼木の個体数を説明するのに最適なものとして選択された。萌芽率に正の効果が検出されたことから、定期的な伐採を伴う里山的な森林管理はヤマザクラ類の更新を促す要因と推測された。アカマツの枯死が大きな攪乱であるにも関わらず負の関係であったのは、管理の歴史や土壌環境など別の要因が関係している可能性がある。


日本生態学会