| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-056  (Poster presentation)

歴史的な都市景観は街なかの生物多様性を高めるか?金沢における鳥類相の時空間変異
Does the historic cityscape enhance biodiversity in the urban? Spatio-temporal variation of avian diversity in Kanazawa

*稲田亮介, 上野裕介(石川県立大学)
*Ryosuke INADA, Yusuke Ueno(Ishikawa Prefectural Univ.)

都市への人口集中が続く中、都市緑地は、都市住民にとって身近に自然と触れ合うことができる貴重な空間である一方で、動植物にとっての生息場所ともなる。鳥類は、都市生態系における高次消費者であり、しばしば自然環境のモニタリング指標とされてきた。
金沢市は、台地と扇状地に広がる古い城下町であり、第二次世界大戦中の空襲による被害も受けていない。このため、戦前からの古い景観や寺社林が残る一方で、新たに開発された住宅地も存在する。また、金沢市の市街地は森林と隣接する場所も多く、都市化が進んだ市街地であっても生物多様性が高い地域があると考えられる。そこで本研究では、金沢市における都市緑地の分布と歴史性が、鳥類の種多様性に及ぼす影響を検証する。
調査地の選定では、まずGISを用いて金沢市全域を三次メッシュ(約1km四方)に分割した上で、都市化と開発年代の違いに着目し、任意の20メッシュを選択し、各メッシュに3つの調査用の定点を配置した。野外調査では、ポイントセンサス法を用い、10分間に調査定点の周囲(半径50m内)に出現した鳥の種と個体数を記録した。これらの調査を、春・夏・秋に行った。また調査定点周辺の土地利用が鳥類の出現パターンに及ぼす影響を明らかにするために、GISを用いて各メッシュの土地利用(植生データ)を整理し、一般化線形混合モデル(GLMM)を用いて解析した。その結果、土地利用のモザイク性(里山Index)が高い場所ほど、出現種数も多く、特に昆虫食性の種が増加する傾向がみられた。また、種組成の違いについて非計量多次元尺度法(NMDS)を用いて分析した結果、森林とその周辺の種組成は、よく似ていたのに対し、都市部から海岸・平野部にかけての種組成は、ばらつきが大きかった。特に金沢城周辺の古く江戸時代から開発されてきた都心部では、古木やオープンスペースが多く、他とは異なる種が出現していた。


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