| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-069  (Poster presentation)

自由行動時におけるオオミズナギドリの神経活動記録
Neuronal recording in the brain of freely moving streaked shearwaters

*本部拓未(名古屋大学)
*Takumi HOMBE(Nagoya Univ.)

渡りを行う海鳥の多くは長距離移動や帰巣を行う際にナビゲーション能力を用いることが示唆されている。またナビゲーション能力には海馬における空間認知にまつわる神経細胞と密接な関係にあることが示唆されている。哺乳類における海馬の研究では特に動物自身がある特定の位置を通過するときに特異的に発火する場所細胞が発見されており、これがナビゲーション能力に関係することが分かっている。一方で、鳥類の脳構造は哺乳類とは大きく異なっており、脳内に場所細胞を持つか否かは明らかになっていない。
そこで鳥類脳内の空間的ナビゲーションを行う神経メカニズムを明らかにするため、新潟県粟島で繁殖するオオミズナギドリを対象に神経活動の記録を行った。神経活動を記録するために、頭部に装着し神経活動を記録することが出来る軽量な無線型データロガーを用いた。これにより、一定空間内を自由に歩き回るオオミズナギドリ幼鳥に対して、鳥類脳内において哺乳類の海馬と相同と考えられている背内側部領域の神経活動と、幼鳥の移動経路を同時に記録した。
神経活動の結果から、哺乳類の海馬領域で見られる神経活動のパターンと類似した神経活動が観察されることがあり、記録された領域が哺乳類の海馬と相同であることが示唆された。また、歩行中には場所、あるいは時間特異的に発火した少数のニューロンが確認されており、海鳥の脳内に場所細胞と類似した細胞が存在する可能性が示唆された。


日本生態学会