| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-072  (Poster presentation)

魚類の口内に寄生する等脚類タイノエの配偶システム
Romance in the mouth of a fish: the first report on genetic mating system of parasitic isopod.

*鈴木絵美子(弘前大学), 武島弘彦(東海大学), 畑啓生(愛媛大学), 川西亮太(北海道大学), 曽我部篤(弘前大学)
*Emiko SUZUKI(Hirosaki Univ.), Hirohiko Takeshima(Tokai Univ.), Hiroki Hata(Ehime Univ.), Ryota Kawanishi(Hokkaido Univ.), Atsushi Sogabe(Hirosaki Univ.)

ウオノエ科は魚類の口腔、鰓腔、腹腔内や体表に寄生する吸血性の等脚類で、世界で約330種が報告されている。アジやタイなど水産重要種にも多く寄生し、その寄生部位とグロテスクな見た目から一般にもよく知られた存在であるが、その生活史には謎が多く、分散や寄生のプロセス、繁殖生態についてはほとんど分かっていない。本研究では新規開発したマイクロサテライトマーカー5遺伝子座を用いた親子判定により、タイ科魚類の口腔内に寄生するタイノエCeratothoa verrucosaの配偶システムを調査した。タイノエの寄生が確認された43匹の宿主において、腹部にある育嚢で卵または幼生を保護していた雌は9個体おり、内5個体を用いてそれぞれの育嚢から採取した卵または幼生16~48個体の親子判定を試みた。解析の結果、育嚢内のすべての子は同じ両親をもっており、雌雄ペアで採取されたタイノエの雌が保護していた子の父親の遺伝子型は、ペアの雄の遺伝子型と一致していた。また雌1匹と雄2匹が寄生していた場合には、体長の大きな雄がすべての子の父親であった。以上の結果から、タイノエは少なくとも1繁殖サイクル中は一夫一妻的に配偶していると考えられる。


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