| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-079  (Poster presentation)

モモジロコウモリの水面採餌飛行戦術~高感度カメラ映像と放射超音波による行動分析~
Foraging strategy of echolocating bats, Myotis macrodactylus, flying above the pond;Behavior analysis by animation and ultrasound emissions

*水口木綿花(同志社大学), 濵井郁弥(同志社大学), 藤岡慧明(同志社大学), 福井大(東京大学), 飛龍志津子(同志社大学)
*Yuka MIZUGUCHI(Doshisha Univ.), Fumiya HAMAI(Doshisha Univ.), Emyo FUJIOKA(Doshisha Univ.), Dai FUKUI(Tokyo Univ.), Shizuko HIRYU(Doshisha Univ.)

 コウモリはエコーロケーションを用いて飛行,採餌を行う動物である.そのため,音響情報からコウモリの行動を推測できる.例えば、獲物への接近から捕食にかけてはterminal buzzという音響的に特徴のあるパルスを放射する。したがって、コウモリが採餌しているかどうかはterminal buzzの有無で判断できる.しかし,音声からの判断のため,捕食の成否については不明であった.そこで本研究では,コウモリの採餌時の音声と行動を16chのマイクロホンと2台の高感度カメラによってそれぞれ観測し,捕食の成否と音声の特徴の関連性を調べた.
 映像データより38回の捕食行動が確認され、3つに分別できた.一つ目は,獲物の捕獲に成功し,そのまま持ち去ることが出来た「保持」で,全体の68.4 %にあたった.一方で,獲物の捕獲に成功後,獲物がコウモリから離れた様子が見られた「落下」が21.1 %,獲物の捕獲ができなかった「失敗」が10.5 %であった.
 これら捕食の成否について音響的に判断できないか,terminal buzzの最後の音から次のパルスまでの長さ(post buzz pause)に着目したところ,上記38回のうち10回についてpost buzz pauseを計測出来た.その結果,「保持」の状態のpost buzz pause は248.3 ± 83.2 ms(N = 8)であった.一方,獲物を捕食できていない「落下」と「失敗」では,サンプル数が十分では無いものの,それぞれ135.5 ms(N = 1)と65.3 ms(N = 1)と短い傾向が見られ,捕食の成否がpost buzz pause の長さに影響を与えている可能性が示唆された.
 今回の成果として,音響だけで捕食の成否を判断できる可能性が示され,コウモリの採餌行動に関するより深い理解が今後得られることが期待できる.


日本生態学会