| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-083  (Poster presentation)

まるでラッコ!?ヒメエゾボラの摂餌生態
Foraging ecology of Neptune whelk, Neptunea arthritica

*山上竜生, 和田哲(北海道大学)
*Ryusei YAMAKAMI, Satoshi WADA(Hokkaido Univ.)

ヒメエゾボラは北西太平洋の潮間帯から水深数十mに生息する肉食性巻貝である。有珠湾(北海道噴火湾東岸)では、本種は固着性二枚貝であるムラサキイガイを主に捕食することが知られている。しかし、本研究の調査地である葛登支岬(北海道函館湾西岸)周辺の海岸にはムラサキイガイがほとんど生息していないため、本調査地のヒメエゾボラが利用している餌生物の種組成は、有珠湾の個体群とは大きく異なることが予想される。
そこで、2018年4月からライントランセクト法を用いた野外調査を行い(継続中)、ヒメエゾボラが摂食している餌生物の種組成、餌生物のサイズ、および摂餌方法を記録して、主に体サイズと関連付けて解析を行った。
その結果、葛登支岬周辺のヒメエゾボラは、巻貝を中心とした多様な餌生物を利用していることが明らかとなった。また大型個体ほど大きな餌生物を捕食する傾向があった。餌生物の種組成は体サイズによって異なり、30mmより小型の個体はヤマザンショウを高い割合で捕食し、40mmより大型の個体はクボガイやヌノメアサリを主に捕食していた。この餌生物の切り替えは、エネルギー要求量の変化だけでなく、捕食能力の向上や行動範囲の拡大に関連すると推測される。
また、本種の摂餌個体は、しばしば、足部で餌生物を包むように強固に捕捉したまま、自身の開口部を上に向けた (ラッコのように餌生物を持った) 仰向けの体勢で発見された。この傾向は大型個体ほど顕著であった。この現象が適応的意義をもつか、偶然の産物であるかは判断できない。しかし、少なくとも仰向けの体勢は、捕食者(鳥類や甲殻類)に発見されやすく、捕食リスクを高めると考えられる。


日本生態学会