| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-115  (Poster presentation)

多雪山地に侵入したニセアカシアにおける雪害の影響と木部形質
The effects of snow damage and traits of xylem in Robinia pseudoacacia L. invading snowy mountains.

*織田一喜(弘前大学), 織部雄一朗(森林総合研究所), 石田清(弘前大学)
*Kazuki ODA(Hirosaki Univ.), yuichiroh Oribe(FFPRI), kiyoshi Ishida(Hirosaki Univ.)

 マメ科の落葉広葉樹ニセアカシア(別名ハリエンジュ) Robinia pseudoacacia は、北アメリカ原産の外来種である。本種は世界有数の豪雪地帯であり、原産地よりも多雪な青森県八甲田山系にも侵入しているが、寡雪である津軽平野に比べ本種の生息パッチの分布は局所的であり個体密度も低地に比べ少ない。
 本研究では、多雪山地という新規環境に侵入した外来樹種の分布や成長への雪の影響を明らかにするため、雪による樹体の破壊、雪害に着目し、青森県八甲田山系と津軽平野に見られるニセアカシアを対象として雪による幹・枝折れ被害と木部強度の差異を多雪山地2地点と寡雪平地1地点で調査した。
 調査の結果、多雪山地は寡雪平地と比較して雪による枝や幹の折損が発生確率・頻度ともに高かった。樹幹については、多雪山地1地点において、樹体強度の指標となる弾性率が寡雪平地よりも有意に低かった。また、枝については、強度と相関する密度の場合、寡雪平地に比べて多雪山地2地点が有意に高かった。
 多雪山地にみられる樹体の折損多発は、一部の地域では樹幹の弾性率が低く、強度が低いために発生している可能性が考えられた。しかし、枝においては、多雪山地の枝は寡雪平地よりも密度が高いという結果が得られたことから、多雪山地における枝の折損多発は強度からは説明できない可能性がある。多雪山地における雪害の原因を解明するためには、より詳細な強度の推定や雪量の評価などの更なる検証が必要である。


日本生態学会