| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-157  (Poster presentation)

林縁性草本ホタルカズラの送粉成功における被陰・被覆の影響 【B】
Shading and covering by neighboring plants influence on pollination success in forest edge herb Lithospermum zollingeri 【B】

*石井凜, 勝原光希, 丑丸敦史(神戸大学)
*Rin Ishii, Koki Katsuhara, Atsushi Ushimaru(Kobe Univ.)

 植物は繁殖過程において共存他種から様々な負の影響を受ける。例えば、他種の開花によって引き起こされる送粉者を巡る競争や繁殖干渉などが挙げられる。一方で、植物の繁殖成功は地上部の栄養器官の存在にも影響を受けうる。他種の葉・茎による植物体の被陰や被覆は野外で頻繁に観察されるが、これらも送粉者獲得や種子生産において重要な負の影響をもたらしうる。花が被陰されることにより、暗がりや温度の低い環境を嫌う送粉者の訪花頻度が減少しうるが、この影響を調べた研究は限られている。また、他種の葉や茎によって花の周囲を覆われてしまうこと(被覆)は、送粉者の花への接近ルートを塞ぎ、採餌の物理的な障害となることが予想されるが、この被覆の影響について検証した研究はみられない。
 本研究では、神戸市北区の里山林の林縁を生息地とする矮性草本ホタルカズラを対象に、共存他種の地上部栄養器官から受ける花の被陰や被覆の影響を、特に送粉過程に着目して調べた。この研究では、ホタルカズラにおいて他種の栄養器官から受ける花の被陰や被覆により(1)送粉者の訪花頻度が減少するのか、(2)雌雄の繁殖成功が低下するのかについて調査した。この調査結果に基づき林縁性の矮性草本における他種の被陰と被覆の影響について議論する。
 調査の結果、共存他種の被陰や被覆は送粉者の訪花頻度を低下させることが分かった。しかし、送粉者種の間で、被陰・被覆の影響は異なっていた。また、繁殖成功については、被陰により結実が低下したが、花粉の授受に関しては影響が見られなかった。被覆は花粉の受け取り、結実率を減少させていた。以上、共存他種による被陰や被覆はホタルカズラの送粉・繁殖成功において負の影響を与えうることが示唆された。


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